腸内細菌が棲み付いていることは、感染予防にも役立っています。腸内細菌は腸壁の表面を覆っているネバネバな「粘液層」に棲み付いています。ここに棲み付いている腸内細菌たちは、私たちに居住が許された細菌たちです。この粘液層は腸壁を守るバリア機能を果たし、外から入ってきた細菌や病原菌、ウイルスなどが容易に入り込めないようになっています。
食事や呼吸にまじって、見知らぬ細菌やウイルスが腸管内に入ってきたとしたらどうでしょう。まず腸管の中に入り込むことができたとしても、ネバネバ粘液の中に入り込むことが難しくて腸管内に定着することはできません。粘液そのものが入りにくい構造をもっているだけでなく、粘液の中には腸内細菌という強固な生きたバリアが存在しているからです。
もし仮に腸管出血性大腸菌、黄色ブドウ球菌などの病原菌が入ってきたとしても、腸内細菌たちの強固なコミュニティーによって排除されてしまうのです。何故なら外から摂り入れた菌は昔から腸内に棲み付いている者たちにとって、自分の縄張りを荒らすよそ者であって自らの生存を脅かす存在でしかないからです。感染・増殖するためにはまずはじめに、腸内細菌たちを打ち負かさなければならないのです。このようにしっかりとした腸内細菌叢は、感染防御に寄与しているのです。
でもそれは病原菌だけではなく、善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌だとしても例外ではありません。生きている乳酸菌を外から摂り入れたとしても、残念ながらその乳酸菌は腸内に定着できません。腸内の住人ではなく、よそ者だからです。外から摂り入れた乳酸菌は2~3日で排出されてしまうため、通過菌と呼ばれます。なので乳酸菌は継続的に摂り続ける必要があります。また通過菌であったとしても様々な役に立ちます。