ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌…なぜこれら善玉菌が多い方がよいのでしょうか。その一つの理由として、これらの菌が腸内で「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」が産み出すことが挙げられます。よい腸内フローラでは、腸内細菌によって多くの「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」が産み出されています。短鎖脂肪酸とは、酢酸、酪酸、プロピオン酸のことをいいます。これは構造的な長さ(構成している炭素の数)で、短鎖、中鎖、長鎖と決めています。
厳密にいうと短鎖脂肪酸の中に【乳酸】は含まれませんが、私は乳酸までも含めて考えたいと思います。腸内で生まれた短鎖脂肪酸は私たちにとって有用な働きをするからこそ注目されるわけであって、それを産生するビフィズス菌や酪酸菌、酢酸菌などは【善玉菌】的な意味合いをもちます。その中にあって腸内で産生された【乳酸】にも腸内環境をよくするなどよい働きがあるわけです。ですから【乳酸菌】はこれまでも今でも、善玉菌の代表格にあります。しかも腸内で生まれた乳酸は、ほとんどが酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸へと変換されます。にもかかわらず乳酸と短鎖脂肪酸とか、乳酸菌と短鎖脂肪酸産生菌というように、わざわざ区別する必要があるのでしょうか。しかも構造的に長いか短いかだけで。それよりも腸内フローラにおける意義から考えると、乳酸まで含めるのが合理的であると考えます。ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌、酢酸菌は、まとめて取り扱ったほうが便宜上好都合です。そのため私は、短鎖脂肪酸といった場合に【乳酸】まで含めることが多いことにご注意ください。
短鎖脂肪酸は腸内細菌による代謝産物です。つまり腸内細菌が腸内でオリゴ糖や食物繊維などのエサを食べて、産み出された産物です。腸内細菌はエサを食べると、新しい産物を産み出します。その産物にはよいものと悪いものとがあります。悪玉菌はアンモニアや有機アミン類など腐敗物質を産み出します。
腸内細菌のエサとなっているのは、私たちが食べた食物のうち未消化で腸まで届いたものです。悪玉菌が好むものばかりを食べていたら悪玉菌を育てあげ、腐敗物質が産み出されるためオナラや便が臭くなります。動物性食品の多食は、悪玉菌を育てることとなります。腸内における短鎖脂肪酸を増やすためには、短鎖脂肪酸を産生する細菌を増やし、さらにはその細菌が好むエサを摂り入れることが重要です。