私たちは乳酸菌サプリメントを摂ったり、ヨーグルとなど発酵食品を摂って乳酸菌を摂り入れています。この意図としては「生きた乳酸菌を摂ることで乳酸菌を増やしたい!」という考えもあるものと思いますが、実際外から乳酸菌を摂り入れたからと言って腸内に定着して増えるものなのでしょうか?。そもそも増やす必要はあるのでしょうか?
結論から言うと、外から生きた乳酸菌を摂り入れたとしても、残念ながら私たちの腸内に定着して増えることはありません。外から摂り入れた乳酸菌は通過菌といって、腸管内を通過するだけです。また腸内フローラの組成が大きく変わることもありません。
ただ乳酸菌(生菌)を摂り入れたひと時は生きていて活動をしてくれます。その証拠に便通が良くなった、口臭が低減したなどの体感があるでしょう。ですから腸内で乳酸菌を増やそうと考える必要はなく、腸管内を通過するだけでもとても意味があります。
実際私も乳酸菌数の増加が確認できなかったとしても、便通が良くなったり、口腔内の違和感がなくなったり、体感は感じています。体感が得られているということでメリットが得られているわけなので、乳酸菌数が増えるかどうかにこだわる必要は無いかと思います。
乳酸菌はもともとビフィズス菌や酪酸菌と比べると腸内においてとても少ない菌です。乳酸菌とビフィズス菌の比率は、「乳酸菌:ビフィズス菌=1:99」などと言われたりします。これは正確にその比率と言う意味ではなく、「1:沢山」という意味で捉えていただくとよいでしょう。またビフィズス菌や酪酸菌はほとんどの日本人が腸内に持っていますが、代表的な乳酸菌でラクトバチルス属は60%以上の人は持ってすらいません。乳酸菌は優勢な菌ではないということです。
乳酸菌はビフィズス菌や酪酸菌とともに≪善玉菌≫として一括りにされていますが、実際は乳酸菌は別物の菌として考えたほうがよいです。棲んでいる場所や役割が異なるからです。乳酸菌は小腸や口腔内、膣などに棲む菌で、ビフィズス菌や酪酸菌は大腸に棲んでいます。最も多くの腸内細菌は大腸に棲んでいて、小腸に棲んでいる菌はごくわずかです。大腸には小腸下部に比べると、1000~10000倍の細菌が棲んでいます。小腸に棲む乳酸菌の数が少ないのは当たり前なのです。でも重要なのは少ないからと言って、あまり重要ではないということにはなりません。何故ならその場所では乳酸菌こそが善玉菌であって、ビフィズス菌や酪酸菌では代わりにならないからです。
実は私の腸内にはほとんど乳酸菌がいません。私は乳酸菌を増やそうと思ってこれまで多くのオリゴ糖や水溶性食物繊維、乳酸菌などを飲用しましたが、私の腸内でビフィズス菌や酪酸菌が増えることはあっても、乳酸菌が増えることはありませんでした。オリゴ糖は試験管レベル(in vitro)では乳酸菌を増やすことが証明できていますが、実際に人の体内で増やすことができるかどうか?は別問題なのです。ですから「オリゴ糖で乳酸菌を増やす」という文言は、額面通りに受け取らないほうが良いと思います。私は乳酸菌に関してプレバイオティクス(エサで増やすこと)には全く期待をしていません。
乳酸菌がエサで増えないとしたら「私のように腸内に乳酸菌が少ない人はどうすればよいのか?」を考えました。生きた乳酸菌を口から摂り入れるしかありません。プロバイオティクスといいます。そのような方こそプロバイオティクスが必要なのだと思います。
ではサプリメントとして生乳酸菌を摂り入れる場合、注意点があります。胃の中は強い酸性になっておりほとんどの細菌は死んでしまいます。ですからサプリメントの中には耐酸性カプセルに充填されたものもあります。医薬品としては錠剤や顆粒状のものが多くそれでは死んでしまうのでしょうか?
答えはノーです。これには抜け道があります。胃の中ですべての菌が死滅するのであれば、食中毒などおこるはずがありません。食中毒菌でも腸まで届きます。また歯周病菌や虫歯菌も大腸内で検出されます。胃酸にやられずに通過することはできるのです。なぜでしょう?
胃の中というのは四六時中「強酸性」であるわけではありません。特に食後は食べ物と混ぜ合わさるため酸が中和されます。食事と一緒もしくは食後であれば、食中毒菌や乳酸菌も胃を通過して腸まで届くのです。また乳酸菌やビフィズス菌はもともと自らが、≪酸≫を産み出す耐酸性の菌です。乳酸菌も食後に飲めば、わざわざカプセル充填せずとも腸まで届くのです。
そのことは私の腸内でも検証してみました。今回使用したのは原料メーカーから直接取り寄せた、乳酸菌(生菌)の凍結乾燥末です。
1000億個(cfu)/g~3500億個(cfu)/gというあり得ない高濃度乳酸菌です。通常の乳酸菌サプリメントや医薬品は、2億~10億個程度であることを考えると、あり得ないほどの高濃度です。乳酸菌1兆個というのは≪死菌≫だからこそ実現できるものです。今回は別の意味があって≪生菌≫を使用しています。私は高濃度<生>乳酸菌を2021年5月15日から食後に経口で1日2回、摂取しました。
■5月15日から乳酸菌を飲用して2か月後、7月15日の腸内フローラ検査の結果では、多少乳酸菌は増えました。ただ私の中では「こんなに高濃度を飲んだのにこれだけ!」という印象でした。
■「もう少し目に見えて増やしたい!」と考えた私は、それから1ヶ月弱ほど飲用量を増量しました。そして8月26日に再度検査に出すと、グラフのように乳酸菌が爆増しました。経口で飲用しても確実に私の腸まで届いて乳酸菌数に表れていました。ラクトバチルス乳酸菌は10倍です。
■さらに興味深いのはここからです。「経口でも胃酸に負けずに良く増えてくれたのね。」と満足した私は、乳酸菌の飲用量を減らしたのです。するとどうでしょう!10月15日の結果では、ラクトバチルスとラクトコッカスが共に減少し、ラクトコッカスは検出すらされませんでした。さらには完全に乳酸菌生菌の飲用を止めた11月30日の結果では、乳酸菌生菌の飲用を始める前の結果に戻っていました。
≪つまりこのことが何を意味するか!≫と言うと、せっかく生きた乳酸菌を摂り入れたとしても定着して増える訳ではなく、多量に飲めばそれがその分だけカウントされてそして減らせば検出されなくなる、つまり≪通過菌である!≫ということです。外から摂り入れた乳酸菌は定着もしないし増殖もしないのです。
また乳酸菌が増えたとは言っても、腸内フローラ全体において乳酸菌の占める割合は微々たるものです。ですから腸内フローラの組成から見ると、「悪玉菌が減ったな」というくらいで大きく変わった印象はありません。いくら高濃度で乳酸菌を飲用しても、腸内フローラの組成までは変わらないのです。
ただ実際に私が飲用した体感としては、便通も良くなりましたし、口腔内の感じもよくなるなど、とても良かったのです。なので「≪乳酸菌が増える≫とか≪腸内フローラの組成が変わる≫とかには、こだわる必要は無いのかな。」、「体感が良ければそれで十分なのかな。」というのが私の考えです。
いま私は乳酸菌のチュアブルを開発中で(11月末に発売見込み)、試作品を1年半以上飲用しています。このチュアブル試作品、実用に向くように乳酸菌数を何段階かにわけて落としてテストを行ないました。そのため前述の乳酸菌数よりも格段に少なくなっています。だからといって調子が悪くなったか?というと相変わらず好調で、しかも口腔内フローラ検査を行なった結果にも、ほとんど変わりはありませんでした。であれば無駄に乳酸菌数が多い必要も無い(高価になるだけ)と考えました。
もともと乳酸菌は少数派の菌なのです。数は少なくても重要な役割をしている菌です。腸内で乳酸菌が増えたり、腸内フローラの組成が変わることを求めなくても、「乳酸菌って【通過菌】として通過するだけで意味がある。」と考えるようになりました。
このページの内容は乳酸菌の≪生菌≫に関する記事です。乳酸菌の≪死菌≫には別の用途がありますので、本ページの内容はあてはまりません。