前回、日本人には日本人の腸内フローラ(腸内細菌叢)があることをお伝えいたしました。そのなかで腸内フローラは現在の食生活や環境による影響よりも先に、限定している別の要素があるのではないかということを述べました。つまりいくら現在の食生活を変えたとしても、腸内には変わらない部分があるということです。
腸内細菌群の中にバクテロイデテス門のプレボテラ属菌という菌がいます。プレボテラ属菌はヒトの口腔内から腸管にかけて広く存在している常在菌です。アフリカや南米、タイやインドネシアなどでプレボテラ属菌が多いことが知られています。腸内フローラは食習慣との関連性が指摘されてきました。プレボテラ属菌の多さは糖質や食物繊維の摂取の多さと関連付けられています。特にタイやインドネシアでは米食の頻度とプレボテラ属菌の多さに相関関係が認められたため、プレボテラ属菌と米食との関連性が示唆されています。欧米においては、菜食主義者の腸内でプレボテラが多いと報告されています。
ところが同じ≪米食文化≫を持っている日本人の腸内では、プレボテラ属菌少ないというのです。米食文化がプレボテラ菌を限定しているのであれば、何故日本人の腸内にはプレボテラが少ないのでしょうか。欧米や日本ではプレボテラ属菌は少なく、バクテロイデス属菌がメインの腸内細菌叢となっています。バクテロイデス属菌は脂質やタンパク質の多い食事と関連付けられています。
中国の遊牧民の研究から都市化の程度とともにプレボテラ属は減少し、逆にバクテロイデス属やルミノコッカス属が増加するとの報告もあります。プレボテラ属の多寡(多いか少ないか)は食の欧米化にともなう食物繊維の摂取量の減少が影響していると考えられています。確かに日本では食生活の欧米化とともに食物繊維の摂取量は右肩下がりで、戦前に比べて1/3にまで落ち込んでいます。戦前の日本人にはプレボテラが多くいたけれども、経済成長や都市化、食生活の欧米化とともにプレボテラが減ってバクテロイデスが増えたというのでしょうか。
もしそうだとしたならば都会の人ほどプレボテラが少なくて、山間部の地域など食生活にあまり変化が無い地域の人の腸内には、今現在でもプレボテラ属菌が多くいなければおかしいです。ただ食の欧米化など、80年にも満たない50年にも満たない変化速度だと思うのです。そのような短い時間の間で腸内フローラにそこまで大きな変化が起きるでしょうか?。
プレボテラ属菌と米食や、糖、食物繊維の摂取との関連性を考える時、≪時間軸≫を考える必要があります。それは①歴史的に長い年月食べ続けてきた影響というように超長期的な時間軸と、②今現在お米を食べているから、菜食主義だからという比較的短期的な時間軸が考えられます。
この報告では≪食文化≫といっており、超長期的な歴史的な時間軸で捉えていることがわかります。それとともに≪米食の頻度≫、≪菜食主義者≫と関連付けられていることから、過去の歴史との関連付けではなく現在進行形を示していることも読み取れます。つまり今、米を頻繁に食べている、今現在菜食主義であるということです。歴史的に米食や菜食、糖、食物繊維を摂取する文化と、今現在お米を食べていれば、菜食主義であればプレボテラが増える可能性があるということです。
となると私のなかで腑に落ちない点がでてくるのです。そもそも私は50年以上に渡り米食人です。幼少期から大学までは、≪完全玄米菜食≫でした。プレボテラが好むと言われているものを全て食べています。
その間バクテロイデスが好む動物性脂肪やたんぱく質は一切摂っていません。
現在の私の食習慣も米が主食です。小麦の摂取量はかなり少ないです。野菜は自家栽培したものが多めで、動物性食品は10%も食べないでしょう。
それでも私の腸内でのプレボテラ属菌は0.00%~0.1%(非常に少ない)の間で推移しており、ほとんど0に等しいものでした。
つまり
という事実があるからです。