私は20歳代のころから健康食品に強い愛着と関心を持っていました。健康食品にはまってゆくと、「何が最強の健康素材(植物)なのだろうか?」という興味が湧いてきます。それを考えるとわくわくしていました。1990年代の当時は、健康食品というと、ウコンや霊芝、紫イペ、アガリクスなどが主でした。そして健康食品ブームとともに諸外国の各地から新しい健康食品が入ってきました。健康博覧会に行くと見たこともないような素材が見られて楽しみでした。でも私はどちらかというと身土不二というか、日本の山野に古来より自生する植物に興味がありました。
それとともに自分自身の手で、最強の薬草を探したくなりました。薬草というのは育っている環境によって栄養成分も大きく異なります。薬草は乾燥されてしまって粉末になったものを見ても、その素材の本当の姿は見えてきません。実際に育っている環境、姿かたちを目にすることで、その素材の良さを知ることができます。
私は万能でありかつ最強の健康素材を求め、日本の各地を巡りながら薬草の写真を撮り、掘っては移植を繰り返しました。
漢方薬や和漢薬としての利用が多いのは、シソ科、ユリ科、キク科、キンポウゲ科、ウコギ科、セリ科、ショウガ科などの植物です。
キンポウゲ科の植物はトリカブトに代表されるように、毒と薬は紙一重といった感じで毒草が多くて扱いづらいです。万能とはほど遠く、健康食品としては不向きです。
キク科の薬草は多いのですが、効能的に目立った薬草がないところが面白くありません。あまり興味がわきませんでした。
ユリ科にはニンニク、ネギ、アロエなど食品としても優秀な素材が多く、漢方薬としても実績があるのですが、やはり物により毒があるということで万能とはいいづらいです。ニンニクはとても優秀だと思いますが。
シソ科植物はハッカやミントに代表されるように漢方薬としても和漢薬としても西洋ハーブとしても、食品としても多く利用されているところが好印象です。でも「トウキやウコギのようなパワーがあるか」と聞かれると、イマイチ役不足といった感じなんですよね。
ショウガ科の植物にはショウガやウコン、ガジュツ、カルダモン、ミョウガ、ゲットウなどがあります。いづれも大変パワーがあって毒もなく、扱いやすいです。ウコンなど当店の創業当時から根強いファンがおり、ショウガやウコンは万能かつ最強の健康食品の一つだと思います。
そうは言ってももっと魅力的な植物があるのです。セリ科です。セリ科植物は薬草の宝庫です。しかも漢方薬でも主役をはる名優ぞろい。トウキ、センキュウ、ボウフウ、ヨロイグサ、ウイキョウ、サイコ、ノダケ、シシウド、ヤブニンジン、ヤブジラミなどは漢方薬として大活躍ですし、アンジェリカ(西洋トウキ)、チャービル、コエンドロ、オオハナウドなどは西洋ハーブとして利用されます。日本の固有種としてはアシタバ、イヌトウキ、ヒュウガトウキがありますが、アシタバにも沢山の栄養成分や機能性成分が含まれています。イヌトウキは昔「純正・日本山人参」という商品名で売られていて私も販売いたしておりましたが、残念ながら台風で畑がやられてしまい会社が無くなってしまいました。私は本当にイヌトウキが好きでした。セリ科の植物はどれをとっても逸品ぞろいで、間違いなくセリ科の植物は最強の植物と言って良いでしょう。
ただこれらのほとんどは医薬品に区分されてしまっているので、健康食品にはあたらないのですよね。しかもセリ科の植物は大概、栽培が難しいです。栽培環境をとても選びます。イヌトウキもとても栽培が難しいと言っていました。例えば我が家に自生している野セリは、毎年同じ場所に顔を出します。決して別の場所には顔を出しません。日照条件や気温、朝夕の寒暖差、湿度、土質など、自分の好みの環境というのがあるのです。私はトウキやシャクなどを移植したりしましたが、上手に丁寧に持ち帰って上手に移植しても、翌年には芽を出したとしても2年目には消えて無くなります。どのような環境でも力強く芽を出すセリ科植物は、アシタバくらいです。アシタバは本当に強いですよね。アシタバは最強の健康素材の一つでしょう。
私が最強素材として推したいのは「ウコギ」です。ウコギの樹皮そのものが「五加皮」と言ってれっきとした漢方生薬なのですが、ウコギ科植物にはエゾウコギ、オタネニンジン(朝鮮人参)、田七人参、アメリカニンジン(西洋人参)、トチバニンジン(竹節人参)といった強力なスターがそろっています。その他にもハリギリ、タラノキ、ウド、コシアブラなど山菜としても人気の高い素材が顔を並べます。もちろん毒もありませんし、樹木ですから栽培が容易です。さらに様々な抗酸化成分を含んで、滋養強壮にもつながるところが私の好みにあっています。こうして私は全国ウコギ探しの旅に出て、様々なウコギを移植して育てています。