「プレボテラ属細菌と疾患との関わり」
大阪大学大学院医学系研究科・免疫制御学
同 医学系研究科・呼吸器免疫内科学
から原文のまま抜粋いたしました。
dysbiosiis(腸内細菌叢が健康な状態から逸脱すること)と関節リウマチとの関係との関与について概説するとともに、Prevotella属(プレボテラ属)細菌が他の種々の疾患(歯周病、細菌性膣炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患)に関与しうる事を紹介する。
近年、前述したRA(関節リウマチのこと)患者での免疫異常の起源は、粘膜表面での免疫細胞との相互作用にあるものと考えられ、その舞台として特に肺、口腔粘膜、腸粘膜が注目されている。
また口腔細菌のdysbiosiisである歯周病がRAの発症と関連していることが報告されている。
RA患者における腸内細菌のdysbiosiisが相次いで報告されている。
2008年にフィンランドから、2013年に米国から、2015年に中国より報告された。
米国のニューヨーク大学の研究者等は、発症6ヶ月未満の未治療RA患者の腸内細菌叢を16SrRNAを標的とした次世代シークエンサーの手法を用いて解析した所、Prevotella copri(プレボテラ・コプリ)が「増加していることを示した。
我々は、日本人の発症早期のRA患者の3人に1人がP.copri(プレボテラ・コプリ)の割合が高いという結果を報告した。さらに、P.copri(プレボテラ・コプリ)の割合が高いRA患者由来の腸内細菌叢を無菌の関節炎モデルマウスに移入し、腸内細菌叢ヒト化マウスを作成したところ、健常者由来と比較してTh17細胞を介した関節炎が憎悪した。このことから、早期RA患者においてP.copriの増加を伴う腸内細菌叢の異常が、関節炎の発症・憎悪に関与していると考えられた。
Prevotella属細菌と疾患との関与について、最も知られているのが、歯周病との関連である。Prevotella属は口腔内の歯周病原性を持つ細菌の中で最も分離度が高い。
また細菌性膣炎においてもPrevotella属細菌との関与が示唆されている。細菌性膣炎とは、健康状態の悪化などにより女性がら罹患する病態であり、膣内のLactobatcillus属細菌(乳酸菌)の減少とその他の嫌気性菌が膣内で増殖することが発症に関与するとされている。
Prevotella属細菌が乳児の気管支喘息の憎悪に関与するとの報告も認められる。このようにPrevotella属細菌は関節リウマチだけでなく、他の多くの疾患との関連性が示唆されている。