中国薬膳的効能
中国漢方的には微涼性ということですから陰性の食材ということになります。栄養成分的に見ると血圧を下げたり、血糖値を下げたり、利尿作用があったりということですから、やはり陰の作用であることがわかります。
アシタバは、関東、伊豆半島、伊豆七島、紀伊半島の温暖な海岸地域に生える、日本固有の薬草です。ここ伊豆の沿岸部の至る所に生えています。
今日芽を摘んだら明日には芽がでるほど強い草という意味合いのアシタバ。今日つんで明日芽が出ることはないですが、2~3日後には上記のような新芽が出てくる非常に強い植物です。明日葉の強靭さというのは特筆もので、普通セリ科の植物は繊細なものが多く、ちょっと環境が変わってしまうだけで育たずに、移植が大変難しいものが多いのです。例えば山から掘ってきて移植する場合でも、移植ゴテで根を傷つけないように土ごと掘り返してすぐに植木鉢に移して環境を変えないように持ちかえるほどの慎重さがないと移植は成功しません。ところが明日葉の場合根っこだけを、ここ伊豆から東北まで宅急便で送って植えても根づいちゃうのですから驚きです。しかも伊豆と東北では気候も全く違います。この植物は本当に強い生命力だなといつも感心します。
アシタバはセリ科シシウド属に属します。この属はトウキ(当帰)、ヨロイグサ(ビャクシ)、シシウド(独活)、ノダケ、イヌトウキなど、とても薬効の高い生薬の宝庫です。私は個人的にアシタバはそれらと同属であり、それらに引けをとらない素晴らしい植物だと思っております。
上記2枚はアシタバの葉っぱの画像です。ところが色も違えば、形も違い同じアシタバだとは思いません。セリ科植物の葉っぱはとても個体差が大きく、とてもまぎらわしいです。実際に葉っぱだけ見るとトウキやシシウドにそっくりです。
アシタバは薄い緑色の花を、晩秋~冬にかけて咲かせます。トウキやシシウド、ヨロイグサが夏に花を咲かせるのに対して、冬というのはとても遅い開花です。そして大多数のセリ科の花は白いのですが、アシタバの花は薄い緑色をしていてこれも変わっています。
アシタバはバナナよりも多くのカリウムを含んでいるほか、カルコン、クマリン、イソクエルシトリン、ルテオリンといった特別な有効成分も含んでいます。ベータカロテン、ビタミンB2、食物繊維に至っては、は全野菜中でもトップクラスの含有量を誇っています。その他鉄分、葉酸も多く含むスーパー野菜です。
スーパーで売られているアシタバは細っこくて、あまり癖も無く、おいしいかと思います。ところが実際に自生しているアシタバの葉っぱは、とても苦くて、食物繊維も多くゴワゴワしておりあまりおいしいとは言えません。ましてや上記画像のように成長したアシタバの葉は苦くて食べられたものではなく、下の画像のような出たての新芽でなければ食べられたものではありません。それに新芽であっても苦くて食物繊維が多いことに変わりはありませんから、私にとって野菜というような印象はなく、むしろ薬草といった感じです。でもその苦さこそが薬効成分なのでしょう。
明日葉の葉や茎を切ったときに出てくる淡い黄色の汁には、明日葉特有のポリフェノールの一種であるカルコンやクマリン、そしてイソクエルシトリンなどが含まれています。この部分に利尿、緩下、毛細血管強化作用があり、緩下、利尿、高血圧予防薬として用いられています。またこの黄色い汁には強力な抗菌作用があり化膿防止にも利用されてきました。
黄色い汁の中に含まれるカルコンは、「やせホルモン」や「長寿ホルモン」と呼ばれる、アディポネクチンという生理活性物質の産生を促進します。アディポネクチンが分泌されると、糖や脂肪の消費が促進され内臓脂肪を減らす働きがあります。
黄色い汁に含まれるイソクエルシトリンには、毛細血管強化作用があります。また上記アディポネクチンの産生が促進されると、傷ついた血管を修復したりプラークの生成を防いだり、血管を拡張したりして動脈硬化を予防します。こうして血管を健全化したうえで、アシタバに多く含まれるカリウムには余分なナトリウムを体外に排出する働きがあるため、血圧を下げ、動脈硬化や高血圧等を予防する効果が期待できます。
またアディポネクチンは、インスリンの感受性を高めて(効きををよくして)、血糖値を下げる働きがあります。糖尿病の予防や糖化の防止など老化防止に一役買います。
カリウムやクマリン、ルテオリンの作用により利尿効果があり、尿の排出を促しむくみをとります。